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プロローグ

全てを見ていたのは三日月だけ。

山田武クンは夜道が嫌いです。と言っても夜道が好きな小学3年生はあまりいないでしょうから、当然の事かも知れません。クラスの安藤先生は「暗くなる前に早く家へ帰りなさい」と言いますが、毎日の放課後を殆ど塾で過ごす山田君には無理な話です。

「良い?中学受験は小学校に入った時から始まっているんだからね?」
ママは厳しそうな声と表情で塾のパンフレットを押し付けてきました。ちなみに中学受験へ積極的なのはママだけです。武クンは友達が行っているから塾に行っているに過ぎず、パパは「公立の中学で十分だと思うけどな~」と、ママのいない所で言っています。(もちろんママの前では反対の事を言っています、大人ってずるいや)

毎日学校が4時には終わってそれから8時まで塾でお勉強(実際には友達の健君とバレないようにお喋りしていますが)全く社会人と変わらないほど頑張っていると思います。塾の自動ドアを潜り、夜道へと一歩踏み出します。武クンの家は塾から真っ直ぐ歩き4つ目の角を左に曲がって、次の角を右に曲がった所です。4つ目の角を曲がった所で健君とはお別れ、バイバイと手を振って2人は別方向に歩きだします。

ママとパパが待つお家までは後5分もあれば着きます。塾を出る際にちゃんと帰るコールをしたし、電話口から聞こえてきたママの声は上機嫌で、今夜はカレーだから早く帰って来なさいと言っていました。カレーは山田君の大好物です。特にりんごを入れてくれるママ特製のカレーライスは絶品だと思っています。(この話を友達にしたら変な顔をされましたが)

次の角を曲がれば山田君のお家、カレーの匂いが届いてきそうです。早く帰っていただきますをしようと思ったら電柱の陰に小さな子が座りこんでいました。それは小さな女の子でした。肌の色は白く、大きな一重の目。髪は腰まであるロングヘアーで、背は山田君より少し小さい程度。青色のワンピースがよく似合っていました。同じ学年かと思いましたが、こんな子――こんな可愛い子は学校で見た記憶がありません。いくら山田君が小学3年だとしてもその前に1人の男です。女の子が夜道に一人で座りこんでいたら心配するし、妙な気持が湧きあがってきます。ドキドキする下心を隠しながらその子に話しかけました。

「ねぇ、どうしたの?」
その子は透き通るような白い声で答えてきました。
「お人形がね、逃げちゃったの」
地面を探しながら上目遣いで答えてきます。その様子にますます変な気持が舞い上がってきました。先日の学級会で近頃変質者が出るので気をつけましょうと先生が言っていましたが、その気持ちが少しだけ分かった気がしました。ママのカレーは食べたいし、あまり帰りが遅くなったらパパのゲンコツが飛んできます。でも、何故か、【そんな事どうでも良いや】武クンはその時そう思いました。そう思わせる何かがその子にはありました。

一緒に探してあげるよ、山田君はそう言ってしゃがみ込みます。視線はワンピースの胸元をジロジロ見ています。視線に気付かれそうになると急に話題を変えました。こういう所、やっぱり男の子です。
「何でお人形さんは逃げちゃったの?」
「ん~と、腕や足を取ってたら逃げちゃったの~」

ああ、多分分解している途中に落としちゃったんだな。でも、お人形を分解なんて変な子だな。一瞬だけ山田君はこの子に妙な印象を抱きました。しかしその違和感は胸元から見える小さな膨らみや、太ももの白さにかき消されました。人の防衛本能は性欲に負ける。大人なら誰しもが体験する事ですが、山田君がそれを悟るには幼すぎました。否、大人なら誰しもが身をもって知る事なので、山田君は早めにそれを体験したに過ぎません。ただ普通の人はそれで痛い思いをして反省してまた繰り返すのですが、山田君に次はありませんでした。

「お人形さん、見つからないね」
そう言った山田君に少女は無垢な瞳で答えました。
「良いの、新しいお人形を見つけたから♪」
純粋なるその瞳は山田君を見つめていました。楽しそうに、嬉しそうに。



30分後。持ち主のいない携帯が鳴り響きますが、闇夜に空しく着信音が響くだけでした。
全てを見ていたのは三日月だけ。

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仕事くれと思ったり、仕事辞めてぇと思ったり、ニート最強と思ったり、そんな有意義な事を考えつつちまちま更新(?)していくブログです。

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