スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

たったひとつ



のこったのはたったひとつだけ
たったひとつだけかもしれないが
それは掛け替えのないたったひとつ

たったひとつ

far from…

人生にとって必要不可欠なものは何だろう?様々な答えが出てくるが、【仕事】と【愛】が正解だと思う。無論世界には60億を超える人がいて、それこそ60億通りの答えがある訳だ。曰く金、曰く家、曰く家族、曰く子供、曰くゲーム、曰く車。しかし家も車もそれこそゲームや漫画も、それらを得る為にはお金が必要であり、お金を得る為には働かなくてはならない。そして働けるという事は仕事があるという事だ。愛についても同様だ。冒頭の疑問に子供や家族という答えがあるとしても、その根底には愛という1文字が付随している。


そして今日、その二つを同時に無くした。


思えば会社に来た時から妙な雰囲気が漂っていた。いつも部下に怒鳴る事を生甲斐にしている部長が今日は何故か大人しい。そして朝礼が始まる頃には普段まず現場に来ないお偉いさんが来ていた。ちなみに以前来訪した時は新年の挨拶であり、それ以来現場に顔を出さなかったのだから、今日は何かがあると全員覚悟をしていた。そして考えられる限り最悪の想像をしていた。

人生ってのはほんと不公平なもので、希望的観測は大抵外れ、絶望的見通しは大抵的中する。今回もその例に洩れなかった。お偉いさんのお話が終わった時に皆の頭へあった事は【再就職先】【ローン】【養育費】などの考えるれば考える程憂鬱になる単語だった。そう考えると【就職先】【住居】という二つの問題だけで済んだ自分はまだマシだったのかもしれない。

その日の仕事をため息交じりで終え、寮へと戻る。会社の温情とやらで暫くは寮にいれる事が確定しているが、それも永遠という訳ではない。仕事先を、住居を、これからの人生を、すみやかに決めて再出発をしないといけない。鞄を乱暴に万年床へと投げ捨てばたんと毛布に倒れ込む。携帯を開くが君からのメッセージはまだ来てない。一応事の顛末は休憩時間中にメールで伝えていが、今だに返信は無い。

そう言えばおかしなもので、【こういう事】になって初めて会話した人がいた。なんとなく苦手だな、そう思い込んでいた人がいざ話してみると気が良い人で、気が付けば携帯同士を向けて赤外線通信をしていた。そして、ガミガミうるさいだけの上司が、「おまえさえ良かったら知り合いの会社に口を利いてやるよ」そう言ってくれた。ありがとうございます、そう言い捨てて仕事に熱中している振りをする。涙ぐんだ自分の顔を見られないように。

そんな事も話したいな。そう思っている時に限って君からの連絡が来ない。いつもはウザいだけの出会い系メールすら今日は携帯を鳴らさない。こういう時は自分が世界全てから無視されたような気がする。好きの反対は嫌いではない、無関心だ。そんな言葉の意味を身をもって感じ始めた頃、携帯が君専用の音楽をかき鳴らす。

メールが来た。
読んだ、読み直した。
そのまま携帯も財布も枕に叩き付けた。
バイクのキーだけ持って、荒々しくドアを閉めた。
隣の「うるせぇぞ!!」という苦情と壁をドンと殴る音だけが、自分を送り出してくれた。

バイクのアクセルを必要以上に吹かしながら猛スピードで道路へと飛び出す。エコという言葉なんて知らねぇ、環境保護団体に注意されたら苛立ち紛れにそう言っていただろう。交通安全という言葉を無視するかの如く制限速度を振り切り、ステップが地面に擦れるほど車体を傾ける。「良いか?苛立ち紛れで運転するなよ」免許を取得した際に教官から言われた言葉だが、そんな一般論は頭から抜け落ちていた。もし同じ事を言われたならば、


うるせぇ、お前もこうなってみろ。


その一言で黙らせた事だろう。数え切れないほどの車を抜かし、数え切れないほどのクラクションを鳴らされ、数え切れないほどのカーブを限界スレスレの速度で曲がり切る。レーサーよろしく運転していたが、考えていた事はレーサーのそれではない。先程のメール内容がぐるぐると脳内を駆け回っていた。

「友達だと思っていた人から告白されたの」「迷ったんだけど、向こうはちゃんとした仕事に就いているし」「やっぱり好きだけじゃこれから先やっていけないと思うのよね」「好きだけどさ…やっぱりばいばいしよ」「あたしだって辛いけどさ、これがお互いの為なんだよ」「あたしなんかよりもっと良い人がきっと現れるからさ」言い訳と自己保身のオンパレードだったが、要約すると一文で済む。無職とはお付き合い出来ません。

「良いか?苛立ちまぎれで運転するなよ」昔耳にたこが出来るほど言われた言葉だが、あの言葉には省略されている部分があるのだと遅まきながらに悟った。正確に言うならば「良いか?苛立ちまぎれで運転するなよ。じゃないと事故を起こすからな」だと分かった。だが、分かるのが遅すぎた。

タイヤがスリップする音。
バイクが地面に叩きつけられる音。
カウルが割れ、ミラーが砕け散る。そしてバイクのフレームが地面を滑りながら火花を散らす。
そしてアスファルトへと叩き付けられる体。最初はごつんと、そしてごろごろと地面を転がる。皮膚が剥がれながら、血を流しながら。

高校時代柔道を習った。ちゃんと受け身を取らないと倒された時にケガするからな。そう先生が言っていたけど今なら言える。受け身を取っても痛ぇよ。闇夜に向けて思いっきり叫びながら立ち上がる。車道に転がっているバイクを急いで起こしてガードレールに立てかけた。事故を識別するなら自損事故という奴だ。コケた際も立て直す際も、運が良い事にその時車は通らなかった。自分のせいで新たな事故を引き起こす事は無かったけども、心の奥底ではこうも思っていた。

別に起こっても関係無ぇや。

自分の人生に絶望して自暴自棄に犯罪を巻き起こす人がいる。自分が奥底に沈んだなら他人をもそこに引きずり込まないと気が済まない人だっている。そんなニュースを見る度に、死ぬなら独りで死にやがれと暖房の効いた部屋で酒とつまみを頬張りながら偉そうにコメントしていたが、今なら分かる。ヒーターも、ビールも、お菓子も、つまみも、ゲームも、漫画も、何もかもなくなりかけた今なら分かる。周りにあるもの全てを巻き込んで滅茶苦茶にしたい気分だ。死なばもろともってな。

ガードレールにボロボロの体とバイクを立てかけながらため息を吐く。タバコを探そうと胸元のポケットを弄るが、出て来たのはこれまたボロボロのタバコと罅が入ってオイルが漏れているライターだった。あらん限りの汚い言葉を吐きながら、ライターと煙草をガードレールの向こうにある雑木林に投げ捨てた。先程から車が何台も傍を通っているけど、誰1人降りて心配などしれくれない。

あの飛ばしていたバカ、事故ってやんの。ざまーみろ。

そんな声が聞こえた気がして、バイクを目の前にある車に叩きつけたい気に駆られた。でも、気になるだけ。そこまでなりきれない中途半端な自分に嫌気がさし、相棒と呼んでいたバイクに蹴りをぶち込む。事故を起こしたのはお前のせいだ。そんな気持ちを込めつつ罅が入った部分を蹴り付けて、さらに破壊した。不幸中の幸いな事にここから2~3キロも歩けば行き付けのバイクショップがある。とりあえず店に行って事情を話して車を出してらおう。でも修理代やこれからの事を考えると廃車扱いにしてもらった方が良いのかもしれないな。どんどん落ち込みながらバイク店へと歩いていった。

バイクなら数分も掛からないんだからすぐ着くだろう。そんな考えは甘かった。いざ歩いてみると予想以上に長い。暗い夜道は延々と続き、冬の道路は寒々と体と心を冷やし、何時着くか分からない道筋はどんどんと陰湿な気分にさせていく。隣を猛スピードですり抜ける車を見る度に思った事がある。

このまま横へと倒れ込んだら楽になれるのかな。

そんな事を思っているとトンネルに入った。確か長さが1キロ程のトンネルであり、ここを抜ければバイク店だ。よし、後少しだ。自分で自分に喝を入れながらトンネルの端っこを通る。一歩一歩踏みしめていると真横をトラックが通り過ぎた。そして運転席から缶コーヒーがぽいっと投げ捨てられ宙に浮いた空き缶はそのまま額へと直撃した。そして地面へ落ちてカランコロンと音がする。

痛くはない、血も出ていない、だけど…涙が出てきた。闇夜のトンネル、存在しているのはたった独り、周りを見回せば猛スピードで駆け抜けていく幸せそうな人々、誰もここにいる歩行者なんて見ちゃいねぇ。

しゃがみ込む、へたり込む、蹲って小学生の如く涙を流す。漫画やドラマならここで肩を叩いてくれる友達や恋人が登場するが、生憎とここは現実だ。隣の車線を見ても皆素知らぬ顔で猛スピードで駆け抜けていくし、そもそも携帯だって自室に投げ捨てている。まぁ、持って来ていた所で同じ事かも知れないけどな。自虐的な笑いで自分を慰める。

最初の内は笑えた。
次には泣けてきた。
そして苛立ってきた。

自分でも訳の分からない言葉を叫びながらトンネルの壁を殴る。何度も、何度も、何度でも。これが造りものの世界なら止めてくれる人がいるかもだが、ここでは誰1人として心配しちゃくれないし、誰1人として止めてくれない。結局止めた。自分の拳が他ならぬ自分の血で赤黒く染まったからだ。

骨が見える程傷付けた右拳を、これまた事故で傷付いた左手でそっと包む。もちろん痛みは治まらない。痛さ、寒さ、孤独、絶望、失望、不安、犯罪、そして…自殺。考えられるだけのネガティブな2文字が頭に浮かんでは消えていく。

蹲って、しゃがみ続けて、泣き続けているとふとした事を思い出した。とある漫画の1シーンだ。良い年した大人がこんな時に漫画を思い出すのもおかしなものだが思い出したんだからしょうがない。確か【うしおととら】という題名だった気がする。主人公の少年が槍を持って妖怪と戦うというよくあるバトルものだ。その中のお話でトンネルにて闘う章があった。主人公の父親が戦いに巻き込まれた中学生に1つの言葉を投げ掛けるシーンだ。


野村君よ、トンネルってのはいやぁな時みたいだな。
独りっきりで暗くてよ…でもな、いつかは抜けるんだぜ。



もちろんこの後漫画では妖怪を倒してめでたしめでたしでこの章は終わるのだが、残念な事にこれは現実だ。自分を助けてくれるヒーローはいないし、基本的に自分の事は自分でどうにかするしかない。今風の言葉で言えば自己責任って奴だ。よっこいしょと立ち上がりながら壁にどんと掌を叩き付ける。またしても手を激痛が襲う。分かってる、そんな事は分かってんだよ。

愚痴っているだけじゃトンネルは抜けられない。
不貞腐れてしゃがみこんでいるままじゃ、いつまで経っても暗い穴倉の中だ。
自暴自棄になって周りに八つ当たりしても何も変わりゃしねぇ。相手が――自分が傷付くだけだ。

でも…それでも…!!

漫画ならそろそろ車が止まって「大丈夫?」と声を掛けてくれるんだろう。
ドラマだったら部屋に残された携帯が今頃はチカチカと点滅しているんだろう。

だけど、これは【リアル】だ。
どんなに頑張ってもどうにもならない事がある。
どんなに真っ正直に生きても理不尽過ぎる目に合う事だってある。
どんなに…どんなに、前へ進もうとしても、思い通りにならない事が――むしろならない事の方が多い。

現実としては自分の横を車が通り過ぎるだけだし、後日談になるが、結局部屋に戻った所で何一つ着信やメールも来ていなかった。最後に送られてきたメールへ返信してはみたものの、宛先不明となって戻ってきやがった。ああ、メールが来たぞ。自虐的な笑いでそう呟いたのは別のお話だ。

これを書き込んでいる今となってはこう思う。暗くても、寒くても、痛くても、辛くても、苦しくても、足掻くしかない。足掻いて足掻いて前に進むしかない。とりあえずはたったひとつ――自分だけはここに無事あるんだから。短い穴倉もあれば長い穴倉もある。それこそ出口が無いんじゃないかと思える位のそれだってある。だけどだ、絶対に出口はある。座り込んだら――諦めたら二度と出れなくなる。結局は出口に向かって歩き続けるしかないし、それしか出来ないのかもしれない。

そして歩き出す。トンネルを抜ける為に。
行くぞ。誰に言うでもなく呟いた。否、それは自分への激励だ。
暗く寒いトンネルの中を1人歩き始めた。ゆっくりと、一歩ずつ、足掻いていった。
トンネルを、現実を、人生を。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ぺにーと

Author:ぺにーと
仕事くれと思ったり、仕事辞めてぇと思ったり、ニート最強と思ったり、そんな有意義な事を考えつつちまちま更新(?)していくブログです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2ブログランキング

FC2Blog Ranking

検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。