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手袋



くそったれの世の中に
くそったれのくそったれ共
でも、その中にきみはいた
たった…たった1人の君

手袋

~Only One~

「お前さーいい加減手袋外せよな~」

また言ってきた。大きなお世話だ、そう言えれば話は早いのだが、そもそもそれを言えるようなら手袋などしていないし、今現在こんな人生を歩んではいない。

「お宅のお子さんは極度の対人恐怖症だと思われます」

昔々、ランドセルを背負っていた頃母親に連れて行かれた病院で言われた一言だ。クラスメイトと打ち解けない、先生に何か言われても無視、両親が何か言っても知らん顔。そんな1人息子を心配した親達が自分を病院に連れて行き診断結果が下された。どうやら結論としては病気らしい。両親は息子に起こった悲劇を嘆いていたが、拍手して喜びたい気持ちで一杯だった。

だってそうだろ?病気というお墨付きが出たんだ。これで堂々と人と関わらなくて済む。何も言われやしない。何も咎められやしない。何てハッピーな人生だ。万歳って奴だな。

人と喋りたくないから口を開かなくなった。
人と会いたくないから部屋から出なくなった。
人と触れたくないから手袋をするようになった。

完璧だ、何の問題も無い。強いて障害を言えば高校とやらの教育機関に行かねばならない為一日一回の外出が定められている程度だ。だが、それさえ為していれば文句を言われる筋合いはない。口を閉じ、目を伏せて、手袋をはめて一日を終える。いつも通りの人生だ、何の問題も無い。一年目は問題無かった。おせっかいなクラスメイトもいなかったし、何か言ってきた先生も満点の答案を見せれば押し黙った。このまま3年間を過ごす事にしよう、そう思っていたが異変は二年目に訪れた。

「ほら、この温度で手袋なんかしてたら暑いだろ。さっさと取ってこっちで遊ぼうぜー」

諸説言われているが人間同士ってのは気持が伝わるものだ。好きな人には好きという想いが何となく伝わるし、嫌いな人にはどうしてもその感情が伝わってしまう。だから話し掛けてくれるなという無言の要求も相手に伝わって、他者とのちょうど良い関係が保たれていた。だけどだ、どんなに無視をしてもどんなに拒絶の意を示しても、それを言葉で発しない限り気持を慮らない奴ってのはいるもんだ。

「ほら、この温度で手袋なんかしてたら暑いだろ。さっさと取ってこっちで遊ぼうぜー」

一回だけ、喉元から言葉を振り絞って話しかけてくれるな、放っといてくれ。そんな拒絶を伝えた事がある。結論から言うと、人が苦労して発した言葉も無駄だった。
「何だ、喋れるんじゃん」
そう言った後にいつものセリフ。

「ほら、この温度で手袋なんかしてたら暑いだろ。さっさと取ってこっちで遊ぼうぜー」

全く…うんざりするにも程がある。無視をしても無駄、拒絶をしても無駄、そっぽを向いた所でこちら側まで回りこんできて、いつものセリフだ。一回だけ虫の居所が悪かったのか思わず手が出た事がある。気が付いたらどんと突き飛ばしていた。椅子が倒れる音、茫然として床に倒れ込むあいつ、ヒソヒソ話をする周り、そして聞こえてくる「やっぱり病気だから…」という陰口。僅かばかりの罪悪感と共に聞こえて来たのは…

「やったなーこのやろー」
と予想に反した楽しそうな声、次に見えて来たのは無邪気にヘッドロックを掛けてくる相手、その次に感じたのは頭に感じる心地良い痛みだった。既に罪の意識は消え失せて、気が付いたら無我夢中でプロレスごっこに興じていた。もし、人生って奴に転機があるとしたら、実は何でもないこの日かもしれないと後々思い出す事になる。

そんなこんなで一年が経ち、高校生活も最後の年を迎えた。クラス替えの際にはあいつと離れる事を願ってみたものの結局は後ろの席について「今年もよろしくな」なんて言ってやがる。望む事は叶わない癖に、望まない事だけ大挙して襲いかかってくる。ホント世の中ってのは不公平極まりない。

世の中ってのは不公平極まりない以上に理不尽の塊だ。今までは話しかけてくるのがコイツだけで済んだ。それが今となってはクラスの大体が話しかけてくる。

「最初は取っ付きにくい奴だと思ってたけどさ、あいつと喋っているのを見て思ったんだ。何だ、ふつーの奴じゃんってさ」
最近話しかけてきた奴に理由を尋ねたところこう答えてくれた。全く…拒絶したい気分で一杯だ。話し掛けてくるのは男子だけではない、面倒な事に女子もだ。むしろ女子の方が多くなってきたから性質が悪い。

「最近女子から話しかけてもらって嬉しいだろ?お前は顔が良いんだから俺よりも遙かにモテるぜ」
全然嬉しくない、女子から話しかけてもらった所で何も感じない。むしろ嬉しいのは…
「最近のお前は本当に格好良くなったわー。俺のおかげじゃね?おい、女子からのお誘いは断るんじゃねーぞ」
本音を言おうと思ったが、血管が切れかけたので止めた。一体誰の為に頑張ったと思ってんだよ。血管が切れごつんと頭をはたく。
「何すんだよー」
そしてまたいつものじゃれ合いだ。何時からだろう?このじゃれあいすら楽しんでいる自分に気付いた。昔は人と目を合わせるだけで困っていたのに、今ではこいつと目を合わせると違う意味で困ってしまう。

「ほら、言ってんだろ。早く手袋外せよー。何かそれしてると壁みたいで嫌なんだよ」
確かに壁かもしれない。人と触れたくない、その一心で手袋をしていた。人間ってのはどいつもこいつもくそったれだ。人におべっかを使った数分後には別の場所でその人の陰口を叩いている。そんなくそ共に関わりたくなくて黙った。そんなゲス共に触れたくないから手袋を装着した。だけど気付いた。世の中そんな捨てたもんじゃない。どんなに嫌な奴等が大量発生している世の中でも1人位は信じられる奴がいるし、どんなに近づきたくない奴らがいたとしても1人位は安心して寄り沿える奴がいる。

そして、1人いるのならもっといるんじゃないか。そう思ったら眼を伏せるのを止めていた。気が付けば口を開いておはようと言っていた。今では別に手袋を嵌めたくて付けている訳じゃない。単に習慣と化したから毎日しているだけだ。

あんまりにもこいつが外せ外せと煩いので外す事にする。今は宿題に手を付けていて文字通り手が離せないので、左手の手袋を口で咥えて外した。
「よーし、とっぴー」
気が付いたら口で咥えた手袋をこいつが取ろうとしていた。口元にある手袋、それを掴むあいつの手、顔から数センチにある奇麗な指先、顔が真っ赤になる。それでもあいつは、「ん?何真っ赤になってんの?可愛い~」なんて無邪気なもんだ。

…訂正、大っ嫌いだっ!!

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仕事くれと思ったり、仕事辞めてぇと思ったり、ニート最強と思ったり、そんな有意義な事を考えつつちまちま更新(?)していくブログです。

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