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うたかた 第5話 後編

~SPIT IT OUT~

「いい加減にするのはあなた達でしょ」
ともぞーはれなの手から逃れ、仲嶋の隣に立っていた。そして仲嶋は血飛沫にショックを受けたのか早々と気を失っている。ともぞーは2人の痴話喧嘩を見ながられなの代わりに大樹の質問を答えた。
「この子に命なんて問うても分かる訳ないでしょ。数え切れない程の【それ】を刈ってきたんですからね。それは今更人殺しは良くないでちゅよ~なんて道徳の教科書みたいな事を言っても遅いと思いますわよ」
「…何だと?」
大樹はじっとれなを見る。れなはじっと大樹を見据える。大樹がれなを見つめる視線は疑問のそれだが、れなが大樹を見つめるそれは一点の曇りもない愛情だ。
大樹がれなに先程の言葉を尋ねようとする時、またしてもともぞーの言葉が2人を遮った。

「それでも命って奴を答えるとするならば…今からあなた達が無くすものかしらね」
そして大樹とれなの間――宙からサヤが飛び込んでくる。先程ともぞーが遮ったものが2人の会話だとしたら、サヤが遮ったのは具体的な2人の距離だった。お互いの間に割り込むようにサヤは空から降ってきた。急降下しながられなの頭へと爪先を伸ばす。

「油断…大敵だぞ…ちゃんと見ろ…」
「このお邪魔蟲、あたしと大樹の間に割り込むなよ」
れなはぼそっと呟いて宙へと飛び立った。目標は頭上にいるサヤだ。れなはサヤの爪先を難無く交わし、自分の拳をサヤへと叩き付け…

ふっとサヤの姿が消えた。それは砂漠で見えた蜃気楼のように。近付いて手を伸ばせばすっと砂煙と共に消失したように。れなは空中にいながらがばっとともぞーを見る。ともぞーは得意満面な表情で呟いた。
「ほら、私って以外と芸達者だからね。後、よそ見してると危ないわよ」
宙に浮かんがサヤの幻影は消え失せた。ならば本物はどこにいるのか?いた、それは大樹の後ろに…そして大樹の背中に爪を突き立てようとしていた。れなが死に物狂いで叫ぶ。

「だいきーっ!!」
もう遅いよ。ともぞーが余裕交じりの言葉で大樹の死を確信した瞬間、空気が弾ける音がする。宙に浮かんでいたれなの姿が消えた。次の瞬間れなは大樹を抱きかかえていた。そしてれなの背中に刻み付けられるサヤの爪跡。

大樹を抱擁しながら背中から血を流すれな、茫然自失としている大樹、ターゲットを仕留めそこなった事に不満げなサヤ、そして感嘆の表情を浮かべているともぞー。
「あらあら、まさか【空を蹴れる】なんてね。そこまでは調査不足でしたわ。その奥の手、出す所を間違えなければサヤを仕留めれたのにねぇ。まぁ、全ては時既に遅しって事で」
サヤはゆっくりとれなに向かって爪先を振り上げる。れなの命の火はまだ消えてはいないが、背中の傷は思ったよりも深く息も絶え絶えだ。大樹はれなから離れようとするがれなは決して離そうとはしない。それは愛する男を離さない女性のようにも、愛する女を守り抜こうとする男のようでもあった。

「2人揃えて貫き通しなさいな」
ともぞーの声と共にサヤの指先が振り落とされた。



~The Fight Song~

ともぞーは戦闘の展開を予想するのが上手い。それは本人の能力――他人を操るそれや、他人に幻影を見せる力などに起因してはいるが、その点を抜きにしてもともぞーの観察眼は群を抜いており戦いの結末を見謝る事はまず無かった。今回だってともぞーの予想としてはサヤが2人の背中を貫く光景を確信していた。しかしながら現実は少々――かなり食い違っていた。

そもそも死ぬべき2人は今もそこに抱き合ったまま地面に転がっている。そして殺しを実行してようとしたサヤが頭を地面に叩きつけられていた。サヤの頭は地面にめり込んでおり、その頭には小さい手が添えられている。大の大人なら握りつぶせそうな僅かな手の平なのに、サヤの頭蓋骨を掴み、地面に叩き付け、アスファルトに穴を開けた。

地面の土煙りが付いたのだろう。サヤの頭から手を離して赤いワンピースをぱんぱんとはたいた。息も絶え絶えになったれながその少女の名を呼ぶ。

「みう…」
少女は――三日月みゆは手をぱんぱんと叩きながら肉親に挨拶した。
「お久しぶりね、れな姉さん。会いたかったわ」
そして白く細い指先をゴキゴキと鳴らす。久方ぶりにあった姉と握手する為ではない、姉妹2人で抱きしめ合って情を確かめあう為でもない、その指先を心の臓に付き立てる為だ。

「おい、てめぇ。いきなり横からしゃしゃり出てきて何をごちゃごちゃ言っとるんじゃ。あんまり舐めたマネしとったらいてこましたるぞ」
みうが声の方向へと振り向くと、顔の包帯が半分程剥がれたサヤが憤怒の表情で立ち上がろうとしていた。
「あら、驚いた。滑舌が悪いと思っていたけどちゃんと喋れるじゃないの。でも、れでぃとしてその語り口はどうかと思うわ」
「じゃかましい、くそぼけが。もう知らん。お前も、そこのくそ女も、そのヘタれなガキも、この街も…全てがもう【どうでも良いわ】」
そう言ってサヤは顔の包帯をするりと剥ぎ取っていく。最初は余裕顔をしていたみうもさっと身構えた。サヤが包帯を一枚一枚取る度に尋常ではない瘴気が充満していくのを感じたからだ。

「全く…次から次にやる事が溢れてきて…退屈させてくれないわね」
みうがその手をサヤに向ける。サヤも片手で包帯を取りながら片手でみうに向けて構える。
2人の間にある空気が渦を巻き、圧縮され、そして今にも弾けようとしていた。

「そこまでよ」
みうはそんな言葉で止まるつもりは毛頭なかった。しかし、現実としては体が動かない。それはサヤも同様であり、包帯を剥ぎ取ろうとする姿勢のまま固まっている。
「あんまり疲れさせないでくれる?【複数に命じる】のって予想以上に疲れるんだからさ」
ともぞーは口調こそ余裕だが額に汗を流しながら顔は苦悶の表情を浮かべていた。
「サヤ、依頼主及び村からは包帯を取るなと厳命されているでしょ?」
「じゃかましいわ…今すぐこれを解け。こいつら即座に消し去って…」
次の瞬間サヤの頭が再び地面に叩きつけられた。傍目にはサヤが自分で自分の頭を地面へと叩き付けたように見えるがもちろん真相は異なる。サヤの意識は刈り取られ、ともぞーの顔色は赤色を通り越して青色へと変化していた。
「…ったく、不出来な部下を持つと扱いに苦労するわ。もっともそちらはそちらで大変そうだけどね」

「大変なのはお互い様って事ね。所でこの状態は何時になったら解いてくれるのかしら?」
「とりあえず私達が安全な場所に避難するまではその格好でいてもらうつもりよ。現党首様とガチでやり合う程の度胸も実力も私には無いわ」
ともぞーはじろっとサヤを見る。サヤは白目をむいたまま立ち上がりともぞーの傍に立った。そしてサヤは意識の無いままともぞーをお姫様だっこする。
「待て…お前等の抹殺も村から…」
「また何時の日か現れますわよ。それまでごきげんよう」
サヤはばっと地面を蹴って空へと駆け上がった。それから暫くしてみうの状態が解けたが既に終える距離ではなくなっていた。

「…ふぅっ。しょうがない。こいつだけでも殺すか」
そう言いながらみうはれなへと近付いていった。れなの意識は既に刈り取られ、立ち上がる事すら叶わない。
「軟弱ね~今の姉さんは普通の人間以下、そこで倒れている男にすら犯られて殺られるでしょうね」
みうは仲嶋を見ながら言い放った。みうがれなの眼前に立ちはだかった瞬間、みうの前にも立ちはだかった。大樹が、立ちはだかった。

どきなさい、みうは5文字で要求を伝えたが大樹は頑として動こうとはしない。
「どいてよ、あなたはリストには入ってないの。でも邪魔をするなら話は別。障害と判断したなら容赦無く排除するわよ」
「…けんな」
「さっさとこの子から――この場所から立ち去りなさい。そして今日の事は悪い夢でも見たと思って忘れる事ね」
「…ざけんな」
「何で?あなたはこの子を守ろうとしてるの?大体会って数日も経ってないでしょ?それなのにこの子を助けようとするのは何故?第一この子は護られる程の…」
「ふざけんな!!!」

みうは昔から強い子として恐れられてきた。そんな自分に向かってくる者は皆無だったし、荒々しい言葉を向けて来る者も絶無だった。生まれて初めてだった。自分に、怒鳴ってきたものは。

「お前ら…いい加減にしろ…!いとも簡単に殺すとか消すとか言いやがって…!そしていとも簡単に人の命を奪いやがる…!命ってのはな…命ってのは、そんなに軽いもんじゃねぇんだよ!!」

大樹は憤怒していた。虫けらを踏みつぶすように人を殺そうとするれなやサヤに、人を単なる操り人形と化して思うがままに動かすともぞーに、そして動かされだけの鈴木をいとも簡単に殺したれなに、その光景を見ても微動だにしないこいつ等に、そして…そして…そんな状況になっても何一つ出来ない自分自身に激情していた。

みうは理解出来ないという表情で大樹を見つめていた。大樹の瞳を見つめていた。そしてみうは何かに気付き大樹に尋ねる。
「ねぇ、あなたのお名前は?」
「大樹…高杉大樹だ」
「ねぇ、大樹。あなたはれなを殺して欲しくないの?」
「れながどうとかいう問題じゃねぇ。これ以上、俺の前で誰であろうと殺させはしない。誰であろうと、絶対だ」
ふ~ん、みうは少し考えてぱんと手を打った。
「分かった、今日の所は見逃してあげる」
みうは自分の髪の毛を一本引き抜くと倒れているれなの頭にそれをすっと差し込んだ。
「ねぇ、今何時?」
大樹は腕時計を見る、闘いの衝撃で表面が罅割れていたがそれでも時を刻む機能は動いていた。時計の針は午後11時過ぎを指している。

「明日のこの時間午後11時に再びれなの前に現れるわ。そしてその時がれなの最期。まぁどんなに頑張ったとしても一時間以内――明日の日付が変わる頃にはこの子を一生は終わっているわね」
みうはくるっと踵を返してその場を立ち去ろうとする。そして思いだしたように注意を口にした。
「あっ、分かっていると思うけど逃げようなんて考えても無駄よ。私の髪の毛を埋め込んだ以上南半球に逃亡したって居場所を特定出来るんだから」

そしてみうは地面を蹴り上げる際、思い出したように最後の一言を大樹に向かって口にした。
「パパに伝えておいてよ、これで借りは返したからねって」

後に残ったのは幸せそうに気絶している仲嶋と、背中に重傷を負いながらもスヤスヤと寝息を立てているれなと、闇夜に絶叫を轟かせた大樹だった。

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仕事くれと思ったり、仕事辞めてぇと思ったり、ニート最強と思ったり、そんな有意義な事を考えつつちまちま更新(?)していくブログです。

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