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うたかた6話 後編

~Vermilion~

金子がれなの前に立とうとするがその前に大樹が立ちはだかる
「おい、この糞がき。前回は見逃してやったが今回そうはいかないぜ」
「見逃してやったんじゃない、見逃されたんだろ」
金子と大樹が睨み合う。
金子は拳を握りしめ、大樹もまた拳を握り締めた。

金子の後ろから学が大樹に忠告する。
「大樹君、止めてもらえませんかね?じゃないと私達は君を始末しなくちゃならなくなる」
「やれるもんなら…」
大樹の言葉は途中で止まった。薄暗い路地裏の下、街灯が照らしていたのは学が懐から取り出した拳銃だった。

「私は君を撃ちたくないんだ。これは本当だよ。だけどそれ以上にその女性を連れて帰らなくちゃならない」
それでも大樹は怯まない、確固たる決意で学に反抗する。
「人殺しの道具にすると分かってて連れ帰らせて溜まるか」

「くっくっくっ…これはおかしい」

緊張した場面なのに学は微笑した。そして笑いが堪え切れないのか大声で噴き出した。全ての生き物がネミリに付くこの時間での笑い声はどことなく恐怖を感じさせた。大樹は恐れを振り払うように学に向かって怒鳴る。
「何がおかしい!」
「人殺しの道具って…その通りですよ。でもさ…【道具を道具として使って何が悪い?】」

学の眼は冷徹な視線でれなを見つめていた。
てめぇ!大樹は学の元に走り寄ろうとするが金子が立ちはだかる。視線を交差する大樹と金子、そして学はそれを見ながら大樹に忠告した。


「一言だけ言っておきます。別に撃つのは君じゃ無くても良いんですよ」
そう言いながら学はポケットから電話を取り出した。
「ああ、私だ。もうすぐ例の地点に女物の服を持った女性が来るはず。ん?好きにしろよ。嬲るなり輪姦すなり売り飛ばすなり…」
「新城ぅ!!」
大樹が叫び、学はにやっとほほ笑む。そして学は低姿勢でお願いした。

「さて、その少女を渡してくれますね?」


大樹は歯を食いしばった、大樹は自分の無力さに打ち震えた。大樹は守ろうとした少女を目の前で連れ去られるのを目の前でじっと見ている事しか出来なかった。




とある少女の日記
~Cavanaugh Park~

せっかく夜更けに電話が掛かってきたと思ったら単なる仕事での用件だった。超ムカつく!だってさ、夜12時過ぎて気になる男の子から電話が掛かれば失礼という感情よりドキドキするのが普通じゃない?それが単に服持ってこいなんて失礼にも程があるわ!

とは言え「お前以外には頼めないから頼んでるんだろ」と言われると憎まれ口を言いながらその通りに行動している自分が何だかな~って感じ。友達のキューピット役をしている中で一体あたしは何をしてんだろう?って考えたりもするんだけど結局はそうなったらそうなったら良いやで後回し。ん~、この優柔不断さはホントどうにかなんないかなー。

んでさ、結局服を持ってったはいいものの、その場に着いたら「もういらない」ってどういう事!?こら!このくそD樹!!女の子を寒い夜道独りで歩かせてもういらないってのは失礼にも程があるでしょっ!!(怒)ん~、でも家まで送ってくれたのは良かったと言えば良かったのかな?とは言え、個人的には家に送ってくれない方が…だめ~、これはまだ無し!なーしーでーすー。うん、という訳で今日はおしまい。

あー、でもせっかく2人っきりで歩いているんだからもうちょっと話し掛けて欲しかったな~。そりゃあお笑い芸人みたいにムードぶち壊しに喋ってくれるのも困るけど夜道でだんまり決め込んでいるのも女の子を送る男の子としてはどうかと思うよ。

うん、今日は何だかんだで良い一日でした。はい、今度こそ今日はおしまい。


日記を書き換えた少女が1人、女は悩みながらも枕を幸せそうに抱きしめていた。
少女を家まで送った少年が1人、男は苛立ちながら道端に落ちていた空き缶を蹴り飛ばした。

大樹の目の前に現れた記者が1人、仲嶋限は言った。 「まだ夜は長いんだ、もう少し付き合えよ」
新城の目の前に現れた刑事が1人、高杉信也は言った。「まだ夜は長いんだ、もう少し付き合えよ」



~The Kill~

大樹は仲嶋と別れ家路へと戻っていた。時刻は既に午前4時過ぎ、8月等の真夏なら薄らと朝日が昇っても良い頃だろうが、生憎今の時刻では肌に突き刺すような寒さと漆黒の闇しか存在しなかった。3つ目の角を曲がった所が大樹の家だ。正確には大樹の父親である高杉信也の家だが、その本人自体が家に戻ってなく警察署の仮眠室を寝床にしている。よってこの家に住んでいるのは実質大樹一人だ。

大樹が明かりの付いていない家に行こうとすると、玄関に1人の少女がいるのが分かった。誰だ?そう思う前に大樹の脳は望むべき人の姿を想像し、大樹の瞳はいて欲しい人の姿を視界に入れた。れなは玄関の前に一人佇んでいた。それは鍵を忘れた子供が親の帰りをぽつんと待っているように。

「お前…どうして…」
大樹は言葉が紡げなかった。こいつは新城に連れ去られたはずだ。なのに何故ここに戻ってきている?新城が解放した?いや、それは無い。だとしたら①誰かが解放させたか、②それともれな自身が逃げ帰ったか。
「ん?気が付いたらここにいたの~」
れなは能天気な声で答えた。その瞬間に②の回答は消滅した。となると①か…しかし誰が?最も可能性が高いのはあのみゆという少女だ。新城の武力を無視してれなを解放させたとなると彼女しか思い浮かばない。
思案はどうあれ結果としてはれなは解放された。それ自体は喜ぶべき事なのだろう。しかしながら大樹は素直に喜べない。3時間前の大樹なら素直に喜んでいただろう。しかし、中嶋から話を聞いた今となってはれな自身に恐怖を抱いている。

「あの娘は人殺しだよ」

そう仲嶋は前置きして非情なる現実を言ってくれた。

「だけどだ…あの娘は人殺ししか生きる術がないんだよ」

そして中嶋が教えてくれた全て。三日月村の呪われた風習。この平和ぼけした現代において力の重要性。哀しいまでの世継ぎ問題。【はぐれ】と【本家】と【分家】の関係。そしてれなに関する驚愕する事実。

全ての現実がれなへと歩ませる足を止めていた。だけどれなは無邪気な顔でこちらに擦り寄ってくる。鍵を忘れて途方にくれている子供が帰ってきた両親に駆け寄るように。大樹は一歩後ろに後ずさり掛けた。だけど、その瞬間中嶋が言ってくれた事が脳裏に蘇る。

「良いか、この世に何十億人の人がいるかは知れないが、あの子にとってはお前だけなんだ。お前、1人だけなんだぞ」

全ての事実が交錯し、全ての感情が混じり合う。そして…たった1つのシンプルな回答が導き出された。答え自体はシンプルだがそこに至るまでの道は険しく辛いものだった。だけども…大樹はその道を選んだ。


「れな、約束しろ。二度と俺の前で人を殺すな。相手が誰であろうとだ」
れなはう~んと悩んでいる。大樹の言った意味が分からないようだ。それはそうかもしれない。今までれなが言われてきた事と正反対なのだから。だけど、これは当たり前の事なんだ。三日月村では非常識な言葉かも知れないが、ここの諏訪川市では当たり前の事なのだ。れなに――自分に苛立ちながら大樹は声を荒げる。
「どうなんだ!約束できるのか!出来ないのかっ!!」

れなはびくっとしてうんうんと頷いた。
「分かった、それなら俺はお前を護る。高杉探偵事務所の所長として――高杉大樹としてお前を護る」

それは中嶋からの依頼であったが、大樹自身の思いであった。れながはにかみながら血塗れの手を差し出す。それに恐怖を感じないと言ったら嘘になる。だけど大樹は誓った、中嶋に、れなに、そして自分に。

鍵を忘れた子供は親の元に寄り添った。
あらあら、しょうがない子ね。優しい母親がぎゅっとその手を――体を抱きしめるように…

ぎゅっとれなの手に触れた。。
午前4時半、夜が、明けた気がした。

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仕事くれと思ったり、仕事辞めてぇと思ったり、ニート最強と思ったり、そんな有意義な事を考えつつちまちま更新(?)していくブログです。

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