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うたかた 6話 前編

とある少女の電話
~hurricane~

あら、大樹じゃない。こんな時間にれでぃの携帯鳴らすなんて失礼な奴ね。あたしの所に電話するのも良いけどさ~、かなみの所にも掛けてあげなよ。女の子からアドレスを教えてもらえばメールを出すのがルールだし、女の子から番号を教えてもらえば時間に気を遣いながら電話をするのが男の義務よ。

へ?今それどころじゃないって?一体何があったって言うのよ??は?言えないって…それはちょっと無しじゃないの。何も言わず理由すら説明せずに女物の服を持ってこいなんて随分な言い草ね。…分かった、分かった。本業の方なのね。それならかなみには掛けれないわね。分かったわ、今どこにいるの?…了解、2丁目の路地裏ね。…今からだと30分後には行くわ。

良い?これは貸しだからね。ちゃんと返して貰うわよ。とりあえずあたしには明日の帰り道にいつもの公園に止まっているクレープ屋さんでご馳走して貰う。後はちゃんとかなみにも連絡してあげる事。へ?それとこれとは話が別?かなみは関係無いって…あんたね~学校には来ないわ、来たら来たで授業は寝ているおばかさんの為に誰がノートを写していると思っているの?

好きな男子の為に一生懸命テスト範囲をまとめている女心ってのをもう少し理解しなさいよ。分 か り ま し た か 。よし、理解したなら宜しい。んじゃ今から行くからさ。ばいばーい。


携帯の通話ボタンを切った男が1人、男は助かったと溜息を吐いた。
携帯の通話ボタンを切った女が1人、女はばか…そう溜息を吐いた。




日曜日其の参 

~Duality~


「ふぅっ…やっと終わったか」
大樹はそう呟いて地面にへたりこんだ。午前2時。夜はまだまだという人もいるだろうが、自宅へと帰って布団へ潜り込む人の方が多い。店の明かりは殆どが消え、駅の街灯すらも消えている。後はロータリー広場に眠そうなタクシー運転手が並んでいるだけだ。高杉大樹もそれらのように家へと戻りたかったが、状況がそれを許さない。平和でしんと静まり返った街とは対照的に、血と砂埃で溢れている路地裏。物音一つ聞こえない静けさという点では共通していたが、それ以外では全くもって対照的であった。

血だらけで倒れているれな、良い歳して気絶している雑誌編集者、大樹はそれらを見ながら途方にくれていた。普通なら救急車か警察を呼ぶべきなんだろうが、どちらも呼ぶのは躊躇われた。その理由は言わずもがな。
「さて、どうしたもんかな…」
誰に言うでもなくぼそっと呟き――違う、1人に向かって呟いた高杉は仲嶋の元へと歩いていった。
「いい加減起きてもらえませんか、良い歳した大人が狸寝入りなんて格好付かないですよ」
高杉が中嶋に向けて言うとごろっと雑誌編集者が起き出した。
「何だ、気付いてたのか」
「気付かないと思ってたんですか?」

不敵そうに笑う雑誌記者に、更に不敵そうに笑う高校生。2人は一瞬だけ視線を合わし、その瞳はれなへと向けられた。背中に大怪我を負ったはずのれなだが、既に血は止まっている。ワンピースは血痕で赤く染まってはいるが、それを身に纏っている本人は倒れているというより眠っているという方がしっくりきていた。その証拠にすやすやと寝息を立てている。寝顔だけ見れば少女のそれだが、つい先程までこの少女が空を飛び、敵を打ちのめし、そして…無実の人を引き裂いたのだ。

「一体…こいつは何なんだ…」
大樹がれなを見つめながら問いかける。もちろん聞かれた本人はく~く~とイビキをかいており答えられない。やっと口を開いたかと思えば「…う~ん、だいきぃ~」と寝言で答えを返していた。そして回答は中嶋から発せられた。

「三日月村の元党首さまだよ」
大樹は中嶋をはっと見つめる。中嶋は胸元から煙草を取り出してライターで火を付けていた。明かりで灯された表情は様々な事を知っている壮年のそれだった。大樹は中嶋の元に詰め寄って怒鳴るように問いかける。

「あんた、何か知っているんだな。答えろ!」
大樹は中嶋の首元を掴んでいるが当の中嶋は微動だにしない。煙草の煙をふっと大樹に吹きかけながら答える。
「慌てんなよ少年、急いだって何も良い事はないぜ。それどころか相手に足元救われておじゃんだ」
仲嶋は根元まで焦げた煙草を指先で弾いて地面に捨てる。燃えかすになった吸殻はこの状況を指し示しているようだった。

「今この街で連続殺人事件が起きてるのは知ってるだろ?」
「今はそんな事を聞いてんじゃない、今聞きたいのは…」
黙れ。中嶋はそう前置きして逆に大樹の胸元を掴んだ。
「単刀直入に言うぞ。その殺人事件、殆どがそこで寝ているお嬢ちゃんの仕業だ」

大樹はさっとれなを見る。当の本人は「だいきぃ~こんなとこじゃらめだよぉ~」と呑気そうだ。大樹はやっと一言だけ振り絞った。
「…冗談だろ?」
「少年、現実ってのは辛く険しいもんだぜ」
仲嶋はきっぱりと大樹の言葉を否定する。大樹は中嶋の言葉自体を否定したかったが、れなの爪先は無実の人を殺めた血でべっとりと濡れていた。

「安心しろ少年。正確に言うとな、そのお嬢ちゃんはただ命令されていただけだ」
仲嶋はそう前置きしてその本人の名前を言おうとしたが…
「あら、随分とお早いお付きで」

誰も来ないと思われた路地裏に2人の足音が聞こえた。そして仲嶋はその男の名を呼ぶ。その男は名前を呼ばれる前に大樹の言葉を訂正した。
「大樹君、やっと終わりじゃない。むしろこれからが始まりなんだよ」

~Question~

「あら、随分とお早いお付きで。新城さん。」
新城学の傍らには部下の金子がいた。学はつかつかと2人の元に歩きながら拍手をする。

「何も知らないと3流記者だと思っていたんですが…予想以上に色々調べていたんですね。感心しましたよ」
「そりゃどうも、まぁこれが本業ですから」
「勘違いしないで下さいよ。褒めているんじゃない、呆れているんです。早々と気絶した振りをして、事の成り行きをじっと見守っているなんて随分と小賢しいまねをしてくれますね」
「大人は腕力で喧嘩するもんじゃない。化け物の相手は化け物に任せときゃ良い。大人はここで喧嘩するもんだよ」
仲嶋はそう言って自分の頭を指し示した。

「なるほど…だとしたら腕力に頼る私はまだまだガキという事か。おい、金子」
学は隣のグラサン男に目くばせする、体格の良い大男がれなの方に向かっていった。その前に大樹が立ちはだかる。
「お前ら、れなに何する気だ」
「そこのハイエナ記者から聞いているでしょ。その少女は元々私達のものだ。だから連れて帰る、それだけですよ」

「よく言うぜ。三日月村から【はぐれ】まで呼び寄せて元党首様を始末しようとした癖によ」
横から中嶋が乱入して、新城の顔色が少し変化する。
「驚いた…そこまで調べていたんですか」
「元党首とは言え、由緒正しい三日月村の党首を単なる殺人道具にした挙句、手に負えないと分かったら【はぐれ】を使って殺そうとするなんてちょっとあこぎすぎじゃねえか?」

学は闇夜に微笑んで答えた。
「あこぎだからこそ、私達なんですよ」
学は薄らと笑う。中嶋は緊張の面持ちをし、金子の学の号令を待っている。そして大樹はれなの前に立ちはだかっていた。学はにこっと中嶋に微笑みながら忠告と確認をした。
「それにしてもあなたは知り過ぎているようですね…まさか、書いたりはしませんよね?」
「おいおい、俺はそこまで仕事に人生捧げてないぜ。俺だって1人の記者である前に1名の人だ。どんな人間だって命は惜しいもんだろ?」

仲嶋は不敵に笑い、学はくすっと笑った。
「なるほど、なるほど。あなたは思ったより話が通じるようだ。ただし…これだけは覚えておいて下さい。知り過ぎると、命を落としますよ」
学は中嶋に詰め寄るが仲嶋も引かない。
「そっちこそ覚えておけ。窮鼠、猫を噛むって言葉をな」
「…書く、という事ですか?」
「勘違いするなよ。そっちがそう来るならばのお話だ」

2人は睨みあい、そして最初に学が笑いだした、そして中嶋も笑った。
「なるほど。ならば…そっちがそう来ないのなら、私達も【そうしませんよ】」
「それなら問題無い。俺も【そうしないさ】」

2人はにこやかな視線を交わし合う。そして中嶋はその場から立ち去っていった。
「ごきげんよう」学がそう声を掛け、
「ああ、それじゃあまたな」仲嶋が背中越しに答えながら路地裏を後にした。

そして学は再度れなの元に金子と歩いて行く。

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仕事くれと思ったり、仕事辞めてぇと思ったり、ニート最強と思ったり、そんな有意義な事を考えつつちまちま更新(?)していくブログです。

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