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台風の夜に 3

 夢ってのは歳を取る毎に変わるもんだと思う。将来の夢という意味でもそうだし、寝る時に見る夢という意味でもそうだ。子供の頃はお菓子の国やホラー映画等とにかく非現実的な夢を見ていたが、成人式を終えてからはいやに現実的な夢を見るようになった。眠りについてるのにくそ上司の顔を見たり、小言がうるさい両親に説教されたり、憧れのアイドルと一日デートしたりと多種多様だ。最後は現実的?という突っ込みは受け付けませんのであしからず。

 今回見た夢は高校時代だ。学年は二年、季節は秋、場所は教室で文化祭の準備をしていた。遠足にしろ祭りにしろ何にしろ一番楽しいのは行事そのものよりも準備段階という事を実感した。夕焼けに照らされた校庭、長く伸びる影、グラウンドで走り回って汗を流す者もいれば、教室でお喋りに花を咲かせる者もいる。

 そして夢ってのは往々にして現実とは多少ずれている。何故か理由は知らないが、あたしと彼だけでもくもくと準備していた。周りは買い出しとかでいないようだ。さすがに準備が良い。現実の記憶を辿れば大勢でばか話をしながら準備した思い出しかないのにな。このお決まりのシチュエーション、まるで少女漫画の雛型だ。ただ一つ文句を付けるとするならば、この相手役では人気漫画になれないだろうなという事位。あたし?もちろん大人気主人公ですよ。

 クラスで開く模擬店の看板を2人してマジックで書いている。お互い床に座り込んで段ボールの表面に好き勝手な絵や言葉を付けたしていく。店名や料金などの最低限の事は書いた。後はお得意の落書きタイムだ。好きな漫画のキャラクターをうろ覚えで描いていると、彼が視線を段ボールに落としたまま話しかけてきた。最初は昨日見たテレビや最近買った漫画やCD等。そして先生や先輩の愚痴になる。そしてお互いのなじりあい。
「お前だって~~」
「何よ、あんたこそ~~」

 いつもの罵り合いをしながら、もくもくと作業を仕上げていく。
「なぁ、黄色のマジックあったっけ?」
「ん?そこにあるでしょ。何?もうもうろくしたの?」
「うるせー」

 彼は教えてもらった場所に手を伸ばした。あたしはたまには気を利かせて取ってあげようとした。結論としては数秒後顔の赤くなった高校生二人がそこにいた。そして1人の男が緊張しながらゆっくりと言葉を選びながら【言って】きた。いや、【言った】じゃない。【伝えた】だ。

 告白の途中ではっと目が覚めた。何だこれ、一番大事な所で中断なんて卑怯だぞ。夢を放送する局にクレームを付けようか考えながら枕元にある携帯を開く。今何時だ…あれ?何で携帯があるの?雷の時にどこかに放り投げたはずなのに。時刻は午前五時、そろそろ朝日が昇る時間だ。手探りで蛍光灯のスイッチを入れて室内を照らす。

 ……、侵入者発見、侵入者発見。不審者はよれよれのスーツでソファに寝っ転がっている模様。テーブルには犯人内容のノートパソコンが置かれていて開かれた画面にはやりかけの仕事が途中で止まっていた。マウスを持ってコツンッ!と犯人の頭を叩く。相手は何するんだよっ!って寝ぼけ眼で反論してきたがうるさいよ、通報されないだけありがたいと思え。

「お前な~、いきなり何するんだよ!」
「何してるはこっちのセリフよ!夜更けに女の子の部屋に来るなんてルール違反!!しかも無断で侵入なんて死刑よ死刑!!」
「ルール違反も何もあんな風に電話が途切れたら心配になるに決まってるだろうがっ!!」

 ああ、そうか。自分は雷に驚いて電話を落としただけだけど、相手からしたらいきなり叫び声の後に通話が繋がらないんだ。そりゃ心配もするわな。心配も…へへへ~。顔が緩むが悟らせてはいけない。ここはあくまで気丈にだ。

「とにかくっ!いくら合鍵があるからって勝手に入ってこないでよっ!!大体仕事はどうしたの?大事な大事な仕事だったんでしょ!!」
「仕事どころじゃねぇよ!!」
 隣に迷惑な位のボリュームで叫んだかと思うと、顔を真っ赤にしてボソボソと続きを話し出した。   
「あのさー、ぶっちゃけるよ。そりゃあ明日のデートと仕事だったら迷わず後者を選ぶよ。だけどさ、お前と仕事どっちかを選べって言われたら答えは決まっているだろ」
 
 そして、続けて言ってくれた。それは昔叫んでくれた言葉であり、夢の中で囁いてくれた言葉でもある。過去に告白してくれた言葉でもあるし。あたしが一番欲しかった言葉でもあるのだ。
「美咲の事が、好きなんだよ」



 ちょっと前に、「あたしは彼から本当に愛してもらってるんだろうか?実は体だけを愛しているんじゃないだろうか?」って女性週刊誌によくある悩みを抱えていたけど答えはすぐそこにあった。ハンガーに掛けられているまだ半乾きのスーツ、椅子に寄りかかっている汗と疲れでよれよれになったワイシャツ、疲れてるけどとても幸せそうなその笑顔。その全てが、その行為自体が答えだった。そんな事を同じ布団を共有しながらふと思った。

 結論 あたしを傷付けたり怒らせたりするのはこの人だけど、あたしを救ってくれたり安らがせてくれるのもこの人だ。
               
        


「それで?結局どうなったの?」
電話越しに妹が問いかけてくる、必要以上に人の色恋沙汰に突っ込み、必要以上に人の色恋沙汰に口出しをし、必要以上に結果を知りたがる。どうして妹に限らず女の子ってのはみんながみんなこうなんだろう?まぁ、だからこそそれを題材にしたドラマや映画や漫画がヒットするのかもしれないが。

「別にどうもしないわよ。結局昼過ぎまで二人とも寝てて、起きたら外一面晴れているからびっくりよ。テレビを付けたら台風が逸れているのが分かったから一安心。今から海に行くのは遅いから、仕事なんて後回しにして適当な場所に遊びに行こうって事になったの。んでアイツは今家で身支度を整えてる。あたしも準備とかで忙しいのよね~」

 やんわりと切り上げる内容を伝えたが妹には全く伝わってない。伝わって無いのか、伝わったけど尚も無視しているのかは分からない。相手からの尋問をのらりくらりとかわしつつ、窓を開けて外を覗きこむ。空気の匂いと日差しが降り注いできた。

 地面のアスファルトは昨日の雨が嘘のように鉄板へと進化している。卵を落としたらさぞかし美味しい目玉焼きが出来あがろうだろうな。もちろん掛けるのは塩コショウ一択だ。ソースや醤油なんて邪道。電話口の妹は【昨夜は一緒にいた】意味をしつこく聞いてくる。ホント無礼な奴だ。その癖男の前ではその手の話をすると顔を赤くする演技をしやがる。全く、どこの誰に似たのやら。

「はいはい、寝ました。寝ーまーしーたーよ」
「うわぁ、それだけの関係は嫌って言ってたのに結局しちゃったんだね~」
 それだけの関係は嫌だけど、それ無しの関係はもっと嫌なの!口にしようと思ったがやめとこう。まだ妹にはこの言葉は早すぎる。黙って心の叫びを飲み込む事にした。



台風の夜に 4

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